Jリーグのことを「税リーグ」だとか言っとるもんがおるがやけど、プロ野球には長年国税庁からNPBのみが認められていた国税優遇通達があるちゃ。
職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/540810/01.htm
球団の赤字補填を経費にできるがやと
この「直法1-147」というのがどういうもんか、国税庁のHPをスクショするちゃ。
これは1954年に出ている国税通達ながよ。随分昔の話になるのう。
要約したらよぉ、子会社のプロ野球球団が出した欠損金をよぉ、親会社が補填しても損金として計上できるというもんやちゃ。つまり「赤字補填は経費(広告宣伝費)扱いにしていいよ」というもんながよ。
普通、大きな赤字を出した子会社に対して、親会社が赤字を補填しようとしたら、それは「寄附金」として扱われるようになって、課税対象になるもんながよ。これは国税庁のHPにも掲載されとってよぉ、「法人税基本通達9-4-1、9-4-2」に該当するもんやちゃ。資金調達が困難を極めて、倒産寸前になるくらいでないと、まず「寄附金」扱いされるのが、本来のあり方ながいちゃ。
ただよぉ、戦後復興でプロ野球を盛り上げていく過程で、当時の球団オーナーとかコミッショナーとかが政治的に働きかけを行って、野球に出すカネはみーんな「経費」にしていいよー…という感じにしてしまったわけやちゃ。
本来、広告宣伝費というもんちゃ、企業が商品やサービスを不特定多数の消費者に向けて宣伝する経費やちゃ。
JリーグとかBリーグとかそうやけど、スポンサー企業が自分達の名前を広く知られるように、ユニフォームとかスタジアムの看板とかの広告スペースを購入して、企業名や商品名をアピールしていくもんで、そこで生じる経費のことを指すちゃ。
そんでスポーツクラブが出した赤字を埋めるのは、全く別の性質ながよ。
それを「赤字補填も宣伝行為」にしてしまったのが、直法1-147やちゃね。
コロナ禍で他スポーツにも適用に
これ、以前から言われていたがやけど、JリーグでもBリーグでも適用できらーか、いろんな説が出ていたがやね。ただよぉ、コロナ禍の2020年に当時のJリーグ常任理事の木村正明さんの働きかけによって、明らかになったのう。
これは2020年にコロナ禍によって、リーグ中断を余儀なくされた時期での出来事やけど、その当時によぉ、試合数が減ることを危惧されていて、その場合、広告価値が減ったとみなされる可能性があったがやね。
そこで当時の木村正明常務理事が「試合数が減っても、スポンサーがクラブの復旧支援のために返金を要求しなかった場合はどうなるのか?」と国税庁に訪ねてみたわけやちゃ。
そしたら、国税庁からこういう回答が出たがやね。
クラブの復旧支援のために、スポンサーが返金を要求しなかった場合は、そのまんま損金計上されて差し支えがない…という回答をいただくことになるがよ。そして、プロ野球と同様に、クラブ支援のために広告料追加しても、寄附金やなくて損金と計上されてOKになったがよ。
いろんな解釈があって、Jリーグに適用されるか否かで解釈が分かれとったがやけど、この国税庁の回答によって、プロ野球に認められていた税優遇はJリーグでもOKだと統一されたわけやちゃ。(※2021年にはBリーグにも可能という回答をいただくことに)
これによって、多くのクラブはコロナ禍でもなんとか取り切ることができた…ということやちゃ。
クラブ経営が劇的に変わっとるちゃ
木村正明さんの働きかけによってよぉ、Jリーグは大きく変わっていくがやけど、その中でも最も分かりやすいチームが一つあるちゃ。そのクラブの経営情報から考察するちゃ。
V・ファーレン長崎やちゃ!
V・ファーレン長崎といえば、ジャパネットたかたが全株式を取得しとって、まさにジャパネット傘下にあるクラブやちゃ。去年は長崎スタジアムシティを開業して、えらい盛り上がっとるチームやけど、ここの経営情報を見ると興味深いデータが出てきとるちゃ。
V・ファーレン長崎の経営情報が出ているがやけど、2020年の国税庁通達によって、Jリーグの税優遇も認められるようになってからよぉ、特別利益が毎年8億〜14億得られとるがやね。
この特別利益というのが、どういったものか…というところやけど、2020年のV・ファーレン長崎の決算報告に記載してあるがよ。
・最終的に営業損失を10億5,000万円計上しておりますが、債務超過を免れる範囲で親会社であるジャパネットホールディングスからの補填という形での特別利益により、当期純損失は1億4,900万円となっております。
本当は営業収益は18億5,800万円に対して、営業費用は29億800万円かかっていて、本来ならば10億円以上の赤字決算になるところやけど、そこを親会社の補填により、当期純損失(赤字)が1億4900万円にしとるがやね。
ジャパネットホールディングスの運営になるのが2017年春からやけど、それまで特別利益を計上していなかったがやけど、2020年に直法1-147がJリーグにも適用されることになってから、この特別利益が計上されるようになったがよ。やはり親会社からの補填を経費で計算できるようになったのが、かなり大きいのは一目瞭然やちゃ。
そんでグラフにしてみたがやけど、直法1-147がJリーグにも適用できるという国税庁の通達が出てからは、大きく変わってきとるちゃ。2019年までは営業収益と営業費用をトントンに合わせていたがやけど、2020年以降は選手人件費を大幅に上げていて、本来の営業収益を大幅に超える出費をしとるがよ。
そして、大きく欠損した部分については、特別利益として親会社(ジャパネットホールディングス)が補填してしまえば良い…という戦略になっとるちゃね。
その欠損した部分を親会社が補填してもよぉ、損金として扱われるようになるがで、ジャパネットがV・ファーレン長崎に対して出している10億円以上の補填は、全部経費計上されるがで、親会社のジャパネットにとっては、本業の利益を調整して、節税に活かすツールとしてチームを利用できるちゃ。
まあ、クラブの視点から見たら、親会社が多額なカネを使いやすくなってくるだけに、安定的な経営はしやすくなるメリットは大きいちゃ。本来やったら、スポンサーや入場料収益などの収益に見合った、身の丈に合わせながら経営していかないといけないところやけど、親会社が補填する体力ある限り、クラブ自体が独立採算でなくてもあまり気にしなくてもよくなったのが大きいちゃ。
こう考えていくと、半世紀以上もプロ野球にのみ認められていたのが、いかに大きいのかが分かるちゃ。プロ野球自体への発展に大きく寄与したのは確かやけど、本来支払われるべきだった親会社の法人税などが、長年収められていないと思うと、やはり「プロ野球こそ税リーグだ」というのが分かってくるちゃね。
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コメント
コメント一覧 (2件)
この法律を読むまでプロ野球と同様にjリーグやBリーグ、ラグビーリーグにも適応されているのではという感じでしたけど、そうではなかったし適応されたのがつい最近ということが分かりました。ただ、疑問に思ったのがなんで、jリーグ立ち上げた時に議員の1人でもこの法律の改正に動かなかったのかという点が浮かんできますね。戦後すぐの法律で日本の復興のための野球だったとはいえ、様々なスポーツがやがてプロになるや途中で改正するという点を考慮してなかったのかとこの記事を読んで思いました。
>もちさん
コメントありがとうながです。
確かにJリーグ立ち上げの際に議員が動けば…というところは気になるところですちゃね。
他のスポーツがプロになっていく…というのは、野球以外は企業の部活が中心だっただけに、Jリーグが出てくるときまで様々なスポーツがプロになっていくのは、あんまり考えられなかったのかもしれませんちゃ。