2026 FIFAワールドカップを見とったらよぉ、ちょっこし疑問あったがやねぇ。
SNSでは、サッカー選手やサッカーファンを揶揄する言葉として「ヘディング脳」という表現をよく見かけるちゃね。なんか「ヘディングのし過ぎで脳細胞が少なくなっているんだろう」みたいな感じで「ヘディング脳」という言葉が使われとるがやねぇ…。

もちろん、ヘディングはサッカーに欠かせない技術には違いないちゃ。
ほんじゃけどよぉ、現代フットボールを90分見渡したとき、本当にその言葉は競技の実態を表しとるがやろうかね?
今回は医学ではなく、戦術という視点から考えてみるちゃ。
W杯で「キックアンドラッシュ一辺倒」のチームはあっただろうか
今大会はいろんなスタイルのチームがあったのう。挙げてみるとこんな感じやちゃ。
- ポゼッション型
- カウンター型
- ハイプレス型
- 堅守速攻型
など、さまざまなスタイルのチームがあったじゃ。それに1チームの中で複数を使いこなしながら戦っている感じやったがで、実際はこういう括りだけでは表現できないくらい、戦術は多様化していたと言えるちゃね。
しかし、一つ共通していたことがあるちゃ。
「大雑把なキックアンドラッシュだけ」で戦うチームを、ほとんど見なかったじゃ
昔のサッカーをイメージしたらよぉ、GKやCBから前線へロングボールを蹴って、長身FWが競ってよぉ、そこでセカンドボールを拾う…という感じの「キックアンドラッシュ」とかあったもんやちゃ。2000年代はこういうサッカーはあったもんやちゃ。
超絶ロングスローのロリー・デラップで有名だったトニー・ピューリス時代のストーク・シティとか、サム・アラダイス時代のボルトン・ワンダラーズとか、ショーン・ダイチ時代のバーンリーなんかそうやろう。あと、過去のW杯での対戦や、アジアでの戦いで日本を苦しめていたオーストラリアとかも、マーク・ヴィドゥカとかジョシュ・ケネディとかに放り込んだりしとったがで、ああいうチームもキックアンドラッシュ気味のチームやったのう。
しかし2026年ワールドカップでは、高さを武器にするチームでさえ、それだけやなかったじゃ。
ロングボール自体は使うし、相手のプレスを剥がしたり、サイドチェンジで一気に展開したり、身長の低い選手に対して高身長の選手を当てて高さで優位に立とうとするとか、ロングボールの使い方はいろいろあるちゃ。
ほんじゃけどよぉ,それはあくまでも数ある戦術の一つに過ぎんがよ。相手を攻略するための選択肢の一つであって、サッカーそのものやないちゃ。
高さを最大限に生かせるニュージーランドですら、足元で前進しとったじゃ
「高さ」を武器にする代表チームとして、真っ先に思い浮かぶのがニュージーランドやちゃ。
あそこはクラブワールドカップのオセアニア代表でよぉ、オークランドシティ、ワイタケレ・ユナイテッド、チーム・ウェリントンとか出場しとって、割とキックアンドラッシュのサッカーを展開しとったのう。過去のW杯でもそれに近い試合を展開しとったこともあったじゃ。
それによぉ、今のニュージーランドにもそれがちょっと言えるところやけど、前線にはプレミアリーグでも活躍するクリス・ウッドがまさに長身で競り合いの強さが特徴的な選手やちゃね。長年代表で活躍しとって、最多出場と最多ゴール数を誇っとるのう。
しかし、今大会のニュージーランドは、単純にウッドへロングボールを蹴り続けるチームやなかったのう。
左サイドではリベラト・カカーチェが積極的にボールを運び、中盤ではマルコ・スタメニッチが前進の起点となっとるがやね。特にカカーチェはベルギーリーグの日本資本のクラブのシント・トロイデンで活躍しとった選手やし、覚えとるもんはおるやろうけど、とにかく前へ運ぶ推進力が魅力的な選手やちゃね。
あと、ライアン・トーマスやイライジャ・ジャストも足元でボールを受け、攻撃を組み立てます。特にジャストは今大会で3ゴール決めとるように、キック技術も高くて、ゴール前への飛び出しも優れる選手やちゃ。
もちろん、クリス・ウッドへのロングボールは重要な武器やし、ニュージーランドに欠かせない戦力には違いないちゃ。しかしよぉ、クリス・ウッドは「ヘディング専門」のストライカーではありません。
足元でボールを収め、味方へ落とし、背後へ走り、ゴール前では左右両足でフィニッシュまで完結できるアタッカーやちゃ。だからこそ、プレミアリーグで長年活躍できとるがいちゃ。
ほんじゃけど、ウッドが競り勝っただけでは得点にはならんちゃ。クリス・ウッド一人だけでサッカーできるわけないからのう。セカンドボールを回収し、再び足元でボールを動かし、相手陣内へ押し込んどるがよ。
高さという武器を最大限に持つニュージーランドですら「ヘディングだけ」でサッカーをしていたわけやなかったじゃ。
ニュージーランドは今回4ゴールやけど、ヘディングでのゴールは、エジプト戦でコーナーキックから頭で合わせたフィン・サーマンのゴールだけやったしのう。
「大型選手のチーム」ではなく、異なる能力を組み合わせたノルウェー
ノルウェーも、現代フットボールにおける「高さ」の位置づけを考える上で興味深いチームやったのう。
アーリング・ハーランド、アレクサンダー・セルロート、サンデル・ベルゲ、クリストフェル・アイェル
選手の身長だけを見とったらよぉ、長身選手を並べてハイボールを競わせるチームを想像するかもしれんのう。ノルウェーに限らず、北欧は高身長の選手が多いし、過去にそういう選手がおったから、特にそうかもしれんちゃ。
ただよぉ、ノルウェーの彼らは「ヘディングマシン」やないがよ。
ハーランドの大きな武器は、長身を生かした空中戦だけやないがやね。最終ラインの背後へ飛び出すランニング、サイズからは想像しにくい加速力、ゴール前でのポジショニング、左右の足から放つシュート。そして、一瞬の隙を得点へ変える決定力があるちゃ。センターフォワードとして求められる能力は兼ね備えとるし、そもそも得点力が半端ない選手やちゃね。
セルロートはハイボールのターゲットになる局面はあるし、実際に相手のサイドバックに対して、高さで勝負する局面は結構見られたのう。ほんじゃけど、それだけの選手やないちゃ。195cm前後の体格を持ちながら、相手DFの背後へ走るスピードがあり、足元でボールを収め、左足のシュートで攻撃を完結できるちゃ。前線で競り合うだけでなく、地上戦でも違いを作れるストライカーやちゃね。セルロートはレアル・ソシエダでプレーしとったし、久保建英を追っていた方なら分かるやろう。
サンデル・ベルゲも長身ですが、役割は前線でヘディングを繰り返すことやないちゃ。中盤でボールを受け、相手のプレッシャーを外し、前方へ持ち運び、味方へ配球しとんがよ。彼のサイズは対人戦やボール保持を助けとるし、その懐の深いキープ力は魅力的やけど、プレーの中心にあるのは中盤でのボール運びと組み立てながいちゃ。ノルウェーのビルドアップはベルゲが最終ラインに下がって、相手にプレスを剥がしながらパスの出し手になっていたのう。この辺りは、ベルゲはヘンク時代に伊東純也と一緒にプレーしとるし、結構知られとるやろう。
そして、ノルウェーの攻撃を動かしていたのは、マルティン・ウーデゴールを中心とする中盤の構成力ながよ。ウーデゴールが中盤や右のハーフスペースでボールを受けながらよぉ、相手の立ち位置を見ながらテンポを変え、前線やサイドへボールを供給しとらーよ。
中央を閉じられれば低い位置まで下がり、ビルドアップへ参加するちゃ。ウーデゴールが動くことで周囲の選手も立ち位置を変え、ノルウェーは単純なロングボールではなく、中盤の配置とパスによって前進しとんがやね。
さらに、左サイドには小柄で速いアントニオ・ヌサがいたじゃ。プロデビューは16歳と本当に早熟のアタッカーやったがやけど、ヌサに期待されていたのはヘディングやないがやね。スピードに乗ったドリブル、一対一での突破、相手守備を外側から崩す力です。ハーランドやセルロートが中央で相手CBを引きつける一方、ヌサがサイドで局面を動かすことで、ノルウェーの攻撃には幅と変化が生まれとったじゃ。
ベンチにも、アンドレアス・シェルデルップやオスカー・ボブといった、足元の技術に優れた選手がおるがやね。シェルデルップはサイドから内側へ入り、パスやシュートへ持ち込める選手でよぉ、ヌサに代わってスタメンで出ることもある実力者で、イングランド戦では先制ゴール挙げとったのう。
ボブは狭い場所での細かなタッチや方向転換、味方とのコンビネーションによって、地上から相手の守備を崩せるがよ。
つまり、ノルウェーには複数の攻撃手段があったがいちゃ。
- ハーランドやセルロートへ長いボールを入れる。
- ヌサに一対一を仕掛けさせる。
- ウーデゴールを経由して中盤から崩す。
- シェルデルップやボブを投入して、足元の技術で変化を加える。
ノルウェーの強さは、大きな選手をそろえたことだけやないちゃ。高さ、スピード、ドリブル、パス、ボール運び、シュートといった異なる能力を持つ選手を組み合わせ、相手や試合展開に応じて使い分けられとるがやね。
現代フットボールでは、長身であることは大きな武器には違いないがやけど、長身選手にも足元の技術、スピード、判断力、ポジショニングが求められるがいちゃ。デカけりゃいいわけやないがよ。
むしろノルウェーは「大きくてうまい選手」と「小さくて速い選手」を中盤の構成力で結びつけたチームやったわけやちゃ。
子どものサッカーで、ヘディングは「最重要の要素」ではない
ここまで、ニュージーランドとノルウェーを例に、現代フットボールにおける高さや空中戦の位置づけを見てきたじゃ。
ニュージーランドにはクリス・ウッドがいるがやけど、攻撃のすべてを彼の頭に預けていたわけではないちゃ。ノルウェーにもハーランドやセルロートといった大型選手がおるけど、チームを動かしていたのはウーデゴールの構成力やヌサのドリブルであり、高さは複数ある武器の一つながやね。
では、選手を育てる段階では、ヘディングはどのように扱われとらーか?
日本サッカー協会は2021年に、幼児期からU-15までを対象とした「育成年代でのヘディング習得のためのガイドライン」を公表しとんがよ。
ガイドライン・書籍・LIBRARY|指導者|JFA.jp
https://www.jfa.jp/coach/heading_guidelines.html
そこでJFAは、ヘディングに関わるリスクを避けるためによぉ、一律に禁止するがやなくて「正しく恐れ」、適切な方法で習得するという方針を示しとらーよ。
同時に、子どものサッカーではヘディングの頻度は低く、ゲームにおける最重要の要素ではないとも明記しとっちゃ。その一方で、将来必要になったときに安全にプレーできるよう、正しい技術を段階的に身につける必要があるとしとんがよ。この考え方は重要やちゃね。
JFAは、幼い子どもたちに通常のサッカーボールを何度も頭で打たせることを求めとるわけではないちゃ。
幼児期や小学校低学年では、風船や新聞紙で作ったボール、軽量ボールなどを使うがよ。狙いも、強いボールを跳ね返すことではないちゃ。
- 空中を移動する物体を目で追う。
- 落下地点を予測する。
- 身体をボールの位置に合わせる。
- 額でボールに触れることに慣れる。
こうした遊びや運動を通じて、空間認知や身体操作の基礎を育てていくがよ。あくまでも頭でボールを強く弾き飛ばすことやないがやぜ。
小学校3、4年生でも、4号球によるヘディングの反復は行わず、軽量ボールを使って、ボールを最後まで見ることや額で正しく捉えることを学ぶようにしとんがよ。小学校5、6年生になって、ようやく4号球を徐々に導入するちゃ。それでも、衝撃の大きさと回数には配慮することが前提やちゃ。中学生では5号球へ移行するがやけど、軽量ボールや4号球も併用しながら、首回りや体幹の強化、相手との安全な競り合いまで含めて学ぶ方針ながよ、。
つまり、育成年代におけるヘディング指導は「小さい頃から強いボールを何度も頭で打たせる」というもんやないちゃ。
むしろ「ボールを見る」「落下地点を読む」「身体を動かす」「正しい位置に入る」「安全に競り合う」という一連の技術を、年齢と身体の発達に応じて身につけるもんながよ。
JFAのガイドラインでは、ヘディングに必要な要素として、額でボールに触れる技術だけでなく、空間認知、ジャンプのタイミング、着地時のバランス、走る動作から跳ぶ動作への移行、他者との空中での競り合い、体幹の安定、首回りの強化などを挙げとるちゃ。
ここまで見ると、ヘディングは単に「頭にボールを当てる技術」ではないことが分かるやろう。それは、ボールの軌道、相手、味方、自分の身体の状態を同時に把握し、適切な場所とタイミングを選ぶプレーです。
そして、育成年代の試合そのものも、ヘディングが増えにくいように設計されとんがよ。
低年齢では少人数制と小さなピッチが推奨され、スローインではなくキックインやドリブルインを採用しとっちゃ。こうした環境では、意図的にヘディングする場面はほとんど生まれんがよ。
小学校高学年の8人制になっても、成人の試合と比べればヘディングの頻度は少なく、主にゴールキックやクリア、クロスへの対応など、限られた状況で使われるだけやちゃ。
実際、JFAが全日本U-12選手権の試合を分析した結果でも、ヘディングの出現回数は少なく、重要な要素ではなく、行う選手のポジションもほぼ限られていたとされとんがよ。
したがって、少なくとも現在の育成年代のサッカーを「子どもたちが日常的にボールを頭へぶつけ続ける競技」として理解するのは実態から大きく離れているがよ。
子どもたちが最初に長い時間をかけて身につけるのは、ボールを止めること、蹴ること、運ぶこと、周囲を見ること、判断するが大切ながやね。それはヘディング以前に求められる基礎中の基礎やちゃ。ヘディングは、そうした技術を身につけた先で、試合中に必要となる状況へ対応するために加えられる技術の一つながよ。
正しい技術を知らないまま、身体が大きくなり、ボールが重くなり、競り合いの強度だけが上がれば、かえって危険になる可能性があるちゃ。
JFAが目指しているのは、ヘディングを奨励することでも、サッカーから排除することやないがよ。負荷を抑えながら段階的に技術を身につけ、必要なときに安全にプレーできる選手を育てることやちゃ。
これは、現代フットボールにおけるヘディングの位置づけとも重なるちゃ。
これは「11歳以下のヘディングが禁止された」とよく報道されとるイングランドでも同じようなことが言えるちゃ。
FA head of grassroots coaching Les Howie on new heading guidance
https://www.thefa.com/news/2020/feb/24/les-howie-heading-guidance-240220
イングランドFAの方針もよぉ、ヘディングという技術を否定するものではない。目的は、成長期の選手が受ける反復的で不必要な頭部への衝撃を予防的に減らすことあるがやね。ヘディング自体が問題というよりも「反復練習」が問題になりやすいというのが2020年のガイドラインで発表されとんがやね。
低年齢では足元の技術や判断力を優先し、ヘディングについては頭蓋骨や首の骨が発達してきた12歳以降で、試合や練習での曝露量を抑えながら、必要な年代で安全な技術として段階的に導入するしとんがよ。これは「全面禁止」ではなく、競技性を維持しながら潜在的なリスクを小さくするための予防策ながいちゃ。
まあ、イングランドでも「競技の全レベルでヘディングを禁止すべき証拠はない」と発表しとるがやけど、潜在的なリスクを抑えるために、使用頻度は下げる方針ながやね。この辺りは、FAもJFAも同じやろう。
「ヘディング脳」は現代フットボールに即した言葉ではないちゃ
ヘディングというのは、サッカーにおける基礎的なプレーであることには変わりないがやけどよぉ、まずはそれ以前に必要とすることは、足元の技術、判断力、ポジショニング、身体操作を備えることながやぜ。これが全て備わっとる選手が、必要な局面で選択するプレーの一つ。これがヘディングながやね。
「ヘディング脳」という言葉は、この複雑な競技を、頭にボールを当てる行為だけで表そうとしとるちゃねぇ…。
キックアンドラッシュが絶滅危惧種となっている現代のフットボールでよぉ、9割以上が足元でのプレーになっとるというがに、1割以下のプレーであるヘディングだけチェリー・ピッキングして「ヘディング脳」とか言うなんて、今どきのフットボールシーンに何一つ適合しとらんやろう。
そもそもゴールキックも前線へ高くボールを蹴っていくチームが減っていって、今ではゴールキックからショートパスで繋いでいくチームが増えとるのを見りゃ明らかやろう。
あと、クロスだって高いボールをバンバン蹴るようなもんやなくて、グラウンダーでマイナス方向で折り返す方が決定力が高いと見られるようになっとるしよぉ、単純なクロスを選ばずに、カットインや斜め方向からのスルーパスも活用するようになっとるしのう。
しかし、トップレベルの戦術を見ても、育成年代の指導方針を見ても、実際のサッカーはそれほど単純なもんやないちゃ。育成現場からしちゃ、とにかく基礎中の基礎である足元や身体の使い方とか状況判断を身に着けんといけんがやし、現代サッカーでもヘディング自体の頻度が下がってきとるちゃ。
ちゃんと現代フットボールを見ていりゃ「ヘディング脳」というような言葉は、口から出ないとオラは思うちゃね。

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